この前、会社で色々あって、チーム構造がああだこうだと話す機会があった。
登場人物は三名。俺・上司(マネージャー)・もう一人別のマネージャー。
で、その上司には俺が「これいいっすよ」とチームトポロジー勧めてて、どうやら最近読み終わったみたいなんだけど、いい機会だからチームトポロジーの単語を使って、「初期にはこっちでプラットフォーム組んで、俺とこの人で内部トポロジーのストリームアラインドでやりつつ、本業サービスそのものにはX-as-a-Serviceのインタラクション組むのでどうすか?」とか、「最終的にはイネイブリングになるようにして、ファシリテーションからコラボレーションにシフトしつつメンバー組み換えで長期計画組むのがいいと思うっす」みたいな形で、共通言語を使いつつ話すことで、説明に時間を使わずに話がスッスッと進んでいったのを感じた。(なお上司じゃない方のマネージャーは置いてけぼりだった。すみません)
で、あとあとこの経験良かったなーとぼそっと呟いたら、その上司からも「確かにそうだね」と共感をもらえたので、「あ、この感じた良さって俺みたいなチームだの組織だのの本読み漁ってる技術組織ワナビだけのものじゃないんだ」といういい感じの経験ができたのかなーと思います。
というわけで、こういう経験から来たチームトポロジーおよびパターンランゲージの話をつらつらと書いていく。
パターンランゲージは知る人間が増えれば増える=語彙を共有する人間が多いほど福利効果があるんじゃない?というのは理論上は確かにあり得ると思ってはいたけど、実際にそれを体感してからだとこの福利効果は結構馬鹿にならんのじゃないかと思った。
例えば今回の俺の体験のようなチーム構成の変化や配置変換などについては、年にあっても2回とかになりそうではあるけれども、事業の変化に伴ってチーム内の担当領域やロールなんかを変えることは結構頻繁にあり得る。その際、毎回毎回チームの役割や関わりなんかを定義して説明してという作業が必要になる。この段階をすべての話でスキップできるのはメチャクチャデカい。
今後組織のパターンランゲージとしてもっと良い形みたいなのは出てくるかもしれないけれど、それが醸成するまでは最低でも三年ほどかかるだろうと予測していて、さらに言うと海外本ならそれが和訳されるまでも待たなければならない。となると、パターンランゲージの習得のための3~5日ほどの時間をコストに得られるリターンとしては大きすぎるくらいだと思う。
さらに言えば、今回は2人だけの狭いコミュニティでのみ通用する共通言語だったけれど、これが3人、4人と増えていけば行くほど組織内の説明コストはガンガン下がっていくし、ビジョンからずれた時にも修正ガイドラインとして利用可能となる。
これは単にコストが減るというだけでなく、チームの拡張性や変更可能性を上げ、変化への抵抗を下げる効果もあると思う。バリューチェーンやプロダクトのステージによって、「チームが変わらなければデリバリースピードが落ちる」という状況があっても、人間は知らない状態に身を置くことにどうしても抵抗を感じてしまう。だが、パターンランゲージを利用することで、変化を「どうなるか全然わからない」ではなく、「知識としてはある」という状態にメンバーを置くことができる。これは大きいんじゃないだろうか。
ということで、俺の中でのパターンランゲージのリターンは以下となる。
とはいえパターンランゲージの適用には良いところだけではなく、もちろんそこにはコストがあって、こういうのは単に本買って読んどいてだけで知識の共有がなされるわけではない、というのが大きい。
本を読む時間と本代さえかければスキルがセットアップされるのはゲームやらなんやらの世界だけで、現実だとその人が所属するコンテキストや文化なんかが合ってないと「パターンランゲージを語彙として実際に使おう」みたいなところに行きつかないというものがある。そんな人にパターンランゲージを使ってもらおうとするのは難しいし、また、自分自身の体験例から、パターンランゲージの福利効果はどうしても共有による良さの体験がないと実感できないように思える。この実用や説明によって、パターンランゲージを導入するための説明や機会提供を「啓蒙」と表現すると、パターンランゲージのコストは以下となる。